SGLT2阻害薬の使い方

SGLT2阻害薬の使い方

SGLT2阻害薬の使い方

SGLT2阻害薬の使い方

SGLT2阻害薬とは

SGLT2(Sodium glucose co-transporter 2)阻害薬は、腎臓の近位尿細管にあるSGLT2に作用して、ブドウ糖の再吸収を阻害することにより尿中にブドウ糖を排泄するまったく新しい作用機序の血糖降下薬です。

糖尿病患者ではSGLT2阻害薬の服用により、ブドウ糖約100g/日が排泄されます。SGLT2阻害薬のHbA1c低下効果は約1%です。また、約400kcalのカロリー・ロスとなり、約2〜3kgの体重減少効果が期待できます。

SGLT2阻害薬の特徴

血糖低下作用はインスリン作用を介しません

SGLT2阻害薬は、血液中のブドウ糖を尿中に排泄して血糖を低下させるため、その作用にインスリンを必要としません。
血糖値の低下はブドウ糖毒性を解除することにより、間接的に膵臓のβ細胞に保護的に働きます。また内臓脂肪を減少させることで、インスリン抵抗性も改善します。

したがってSGLT2阻害薬を内服すると、血中インスリンを下げながら、血糖値を低下させます。インスリン作用を介さないため、本剤単独では低血糖をきたすことはまずありません。

その効果は血糖依存性であり、腎機能依存性です

血糖値が高くなると、原尿中に排泄されるブドウ糖も増加するため、SGLT2阻害薬によってより多くのブドウ糖が尿中に排泄されます。このため、HbA1cの平均改善度は約1%ですが、血糖コントロールが悪い症例ほど、血糖改善効果はより大きくなります。また、空腹時血糖値の改善度(約30mg/dlの低下)よりも、食後血糖値の改善度(約50mg/dlの低下)のほうがより大きいです。

尿糖の排泄量は腎機能(GFR)に依存するため、腎機能が低下するとSGLT2阻害薬は効果を発揮できません。腎機能がeGFRで60ml/min未満になると効果は約半分になり、45ml/min未満になるとその効果は認められなくなります。したがって、腎機能が低下している患者にSGLT2阻害薬を使用しても、血糖改善作用は期待できません。

内臓脂肪減少効果

SGLT2阻害薬を糖尿病患者が内服すると1日約100gのブドウ糖が尿中に排泄されます。これは約400kcalのカロリー・ロスとなるため、体重減少効果が期待できます。糖質がエネルギー源として利用できなくなると、代替エネルギーとしてまず内臓脂肪から消費されるため、肥満症例では内臓脂肪の減少が期待できます。したがって、副次的な血圧低下効果、脂質改善効果(中性脂肪減少とHDLコレステロール上昇)、尿酸低下効果が認められます。

一方、脂肪分解を促進するためケトン体が増加することがあり、インスリン分泌能が低下している症例ではケトアシドーシスのリスクを高めるため注意が必要です。また、脂肪組織が少ないやせ型の症例では、筋肉のアミノ酸が糖新生のための代替エネルギーとして使用されますので、筋肉量が減少しサルコペニアが悪化する危険性があります。

心血管病抑制効果・心不全抑制効果・腎機能保護効果

2015年9月に公開されたエンパグリフロジン(ジャディアンス)の心血管病アウトカムを見た大規模臨床試験EMPA-REG OUTCOME試験の結果は、その後のSGLT2阻害薬の使用法に関し、大きなインパクトを与えました。1)
本試験は、何らかの心血管病の既往がある2型糖尿病7020例を対象とした心血管病の2次予防試験です。
エンパグリフロジン10mgと25mgおよびプラセボの3群に分けて平均3.1年の観察がおこなわれました。その結果、エンパグリフロジン群(10mgと25mgを合わせた群)は、プラセボ群と比べて1次エンドポイントである3-point MACE(心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合エンドポイント)を有意に(14%)抑制しました。この有意な抑制に最も寄与した因子は心血管死の減少であり、心血管死は有意に(38%)の低下を認めました。さらに副次的な解析として、心不全による入院もエンパグリフロジン群で有意に(35%)低下することも報告されました。
 特徴的なことは、3-point MACEの改善も心不全の抑制も、試験開始後6ヶ月という短期間ですでにプラセボ群との差を認めていることです。このような短期間でのイベント抑制効果は、単なる血糖改善効果だけでは説明できません、この理由については現在も検討されていますが、SGLT2阻害薬の利尿効果が関与していると推測されています。

さらにEMPA-REG OUTCOME試験の腎アウトカム解析結果が2016年6月に発表されました。腎複合イベント(顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニン値の倍増、透析など腎代替療法の開始、腎疾患による死亡)を検討した結果、エンパグリフロジン群ではプラセボ群に比べて有意に(39%)の抑制が認められました。2)

この糖尿病腎症進行抑制効果の理由については、尿細管糸球体フィーソバック(TGF)機構の改善が考えられています。

糖尿病では原尿中のブドウ糖量が多いため、近位尿細管でSGLT2とSGLT1によりブドウ糖と一緒にNaが再吸収され、緻密斑(macula densa)に到達するNaが減少する、そのためTGF機構が障害され、輸入細動脈が拡張し、糸球体高血圧をきたしています。SGLT2阻害薬を投与すると、近位尿細管でブドウ糖とともにNaも再吸収されなくなり緻密斑に到達するNaが増加することで、TGF機構の障害が修復され、輸入細動脈が収縮し、糸球体高血圧が改善する、と考えられています。

この大規模臨床試験の結果を受けて、2016年12月15日に公開されたADA(アメリカ糖尿病協会)の2017年版Standards of Medical Care in Diabetesでは、以下の勧告がなされました。3)

『罹病期間が長く、コントロール不良で、動脈硬化性疾患の既往を持つ2型糖尿病患者では、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(ジャディアンス)またはGLP-1作動薬リラグルチド(ビクトーザ)の投与を検討すべきである。EMPA-REG OUTCOME試験およびLEADER試験から、標準治療に上乗せすることで、心血管死および総死亡の有意なリスク減少が示されたためである。ただし、この2剤で認められた効果が、他の同系薬でも期待できるのか、心血管リスクが低い患者でも期待できるのか、については現時点では不明である。』

また、カナグリフロジン(カナグル)による大規模試験の結果が2017年6月の米国糖尿病学会で発表され、心血管イベントの減少と腎複合アウトカムの改善を認めました。ただし、カナグリフロジン群では、下肢切断と骨折が有意に増加しており、注意が必要です。

SGLT2阻害薬の種類

2017年2月現在、日本では表1の6種類(7製剤)のSGLT2阻害薬が市販されています。4)
これらは、いずれもフロリジンという物質から開発された薬剤であり、構造式がよく似ており、薬剤間での差異は少ないと考えられています。

使用上の注意

脱水

本剤内服により尿糖排泄に伴う浸透圧利尿のため多尿・頻尿が生じますので、飲水が不十分な場合は脱水症状を認めることがあります。
脱水は、脳梗塞や熱中症の発症を増加させたり、シックディの病態を悪化させる危険性があります。冬場は1日500ml、夏場は1日1000ml普段よりも多い飲水を指導することが重要です。

尿路感染症・性器感染症

尿糖排泄の増加によりリスクが増加するため、特に女性で注意が必要です。

ほぼ正常血糖のケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis)

本剤投与にて、ほぼ正常血糖のケトアシドーシスをきたす危険性がありますので、インスリン分泌能が低下している症例には使用しないこと、極端な糖質制限食との併用は避けることが重要です。

食事療法・運動療法も重要

本剤による体重減少効果に多大な期待を持ち、食事療法・運動療法が軽視される傾向があります。また、本剤内服時は、食欲が亢進したり、甘いものに対する嗜好が強くなったりする症例も見られます。
本剤内服中も、糖尿病治療の基本である食事療法は続ける必要があります。
さらに、内臓脂肪を減らしても筋肉量も減ってしまっては困りますので、適度の運動療法も続け、筋肉量を減らさないようにすることも重要です。

最後に、適正使用の指標となる日本糖尿病学会によるRecommendation(2016年5月改訂版) から抜粋して掲載します。5)

(Recommendation)
1. インスリンやSU薬等インスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
2. 75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。
3. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。
4. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
5. 全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、血中ケトン体を確認すること。
6. 本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、必ず副作用報告を行うこと。
7. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

文献

1) Zinman B, et al.; EMPA-REG OUTCOME Investigators: Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015; 373:2117-28

2) Wanner C, et al. EMPA-REG OUTCOME Investigators : Empagliflozin and Progression of Kidney Disease in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2016; 375: 323-334.

3) American Diabetes Association. Standards of Medical Care in Diabetes—2017
http://care.diabetesjournals.org/content/40/Supplement_1/S64

4) SGLT2阻害薬の種類
   日本糖尿病学会編著「糖尿病治療ガイド2016-2017」
     (文光堂) p54

5) 日本糖尿病学会. SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation. 2016年5月16日改訂
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf

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